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⑨ ルーターとスイッチの冗長構成の基本

初めて「冗長構成」と聞いた時に「冗長」は「無駄に長い」「重複している」などのイメージを持ってしまいますが、IT業界では、「二重化」や「予備システムを準備する」ことを言います。具体的には、一部で障害が発生した時に、同じ機能を肩代わりする機能を持つことです。人によってはリダンダントと英語で言う人もいます。

WAN回線の冗長化
ネットワーク機器の冗長化の目的は、2つあります。ネットワークの信頼性の向上と、不可分散です。デメリットは、コストが高くなることです。システム設計では、メリットとコストのトレードオフになります。

一般的な中規模ネットワークにおいての冗長化の対象は、WAN、LAN、サーバーの3つです。そして、冗長化を優先するところはWAN回線です。社内LANと比べて障害時の影響が大きいからです。

WAN回線の冗長構成

WANを冗長化する時は、回線のみの冗長化と、ルーターを含めた冗長化が考えられます。最近は、ルーターの価格が下がってきたので、ルーターを含めた冗長化が一般的になっています。(下図)

WAN回線とルーターの冗長構成

この場合、複数のルーターを冗長化する時に使うプロトコルにVRRPがあます。IP(仮想アドレス)レベルの設計を行うことで、複数のルーターが1台の仮想ルーターとして動作します。VRRPは、Active/Standbyのルータの冗長化でよく利用されています。

ルーターに障害が発生した時に、もう一つのルーターに切り替わります。その時にパソコンは引き継がれた同じ仮想アドレスにアクセスするので、パソコンを設定することは不要です。また、Active/Activeの冗長構成は、複数の機器の通信により送信スループットを向上させることができます。

 LANの冗長化
複数のイーサーネットの物理リンクを束ねて、1本の仮想リンクとして利用できる機能にリンク・アグリゲーションがあります。この機能を利用すれば、LANの高速化と冗長化の両方を実現することができます。

リンク・アグリゲーション

リンク・アグリゲーションは、本来 高速化を行う技術でしたが、冗長化するシステムとしても利用されています。上の図のように回線に不具合があった時は残った回線で通信を継続することができます。

¶ サーバーの冗長化
PCサーバーのネットワークを冗長化をする場合は、負荷分散装置(ロードバランサー)を利用することが一般的です。負荷分散装置は、複数のサーバーに送られるパケットをレイヤー4(IPアドレスとポート)の情報で振り分けます。そのためレイヤー4スイッチがよく利用されますが、アプリケーション・レイヤ7(クッキーやURL)の情報で振り分ける負荷分散装置もあります。

負荷分散装置の仕組み
負荷分散装置の設定は、VIP(仮想IPアドレス)を作ります。クライアントは、VIPをIPアドレスとして認識します。クライアントから届いたリクエストを負荷分散装置が複数のサーバーの何れかに転送する仕組みになっています。

余談ですが、故障率だけを考えるとネットワークよりも機械的な可動部分があるハードディスクの二重化の方が本来は優先されることかも知れません。

障害対策:
・コールドスタンバイ
ネットワークや、機器に障害が発生した時に備えて、同じ構成と設定を予め行った予備機を準備することです。障害の発生時に手動で機器を入れ替えて、復旧させます。

・ホットスタンバイ
ネットワークや、機器に障害が発生した時に備えて、複数の機器を同期させて稼働させます。障害の発生時に自動で機器が入れ替わります。同じ処理を継続して実行することができるので、PCサーバーの利用が多いです。